
リーダーシップのかたち~私らしく挑戦する生き方~
2025年12月13日、東京女子大学エンパワーメントセンター主催の【キャリアのかけはし】連続ワークショップ③「リーダーシップのかたち~私らしく挑戦する生き方~」が大学構内にて開催された。
交流分析士 桜田陽子氏がモデレーターを務め、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社のPrincipal FSI Innovation Specialist松本肇子氏、株式会社ハースト婦人画報社25ans編集長の阿部はるひ氏をパネリストとして招き、「リーダーシップ」をテーマにパネルディスカッション形式で行われた。参加者は在学生、卒業生から一般の方と様々な年代の方が参加した。
本記事は、当日参加した学生ライター、エディター、カメラマンによるレポートである。
【登壇者紹介】
※所属・肩書きは2025年12月取材当時のものです。

交流分析士インストラクター、ワーク・ライフバランスコンサルタント
2000年東京女子大学日本文学科卒。株式会社伊藤園に入社。2018年より株式会社ワークライフバランスに参画し、働き方改革のコンサルティングを提供。育児と介護のダブルケアを経験した⾃⾝の悩みから、⼼と⾏動を快適にする⼼理学「交流分析」に出会い、ライフワークとして、セミナーやコーチングを⾏う。

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社Principal FSI Innovation Specialist
1992年東京女子大学日本文学科卒/1996年同大学院日本文学専攻修了。毎日新聞社に勤務後、2000年7月、Amazon.co.jp立ち上げのため、書籍エディターとして入社。その後、数々の新ストア立ち上げに参画。2019年より金融機関のイノベーション加速を支援する事開発を担当。

株式会社ハースト婦人画報社25ans編集長
2000年東京女子大学日本文学科卒。2003年、アシェット婦人画報社(現ハースト・デジタル・ジャパン)入社。『婦人画報』編集部でファッション&ジュエリーを担当。2011年に『25ans(ヴァンサンカン)Richesse』編集部に異動。2021年から現職。
1 リーダーシップとは
本イベントのテーマとなる「リーダーシップ」。辞書では「指導者としての地位・任務。指導権」「指導者としての素質・能力、統率力」(デジタル大辞泉参照)と定義されている。
しかし今回のワークショップでは、その定義を出発点としながらも、「一般論ではなく、自分流のリーダーシップを言語化する」ことがゴールとして掲げられた。
参加者はまずワークシートに向き合い、
・過去にリーダーシップを発揮した経験
・もっと発揮すればよかったと感じた経験
を書き出した。
会場は静まり、真剣にペンを走らせる姿が見られた。
他者の話を聞く前に、自分の経験と向き合う時間が設けられたことが印象的だった。

2 「リーダーは完璧でなくていい」という気づき
様々な問いを重ねながら進むパネルディスカッションの中で浮かび上がったのは、「万能なリーダー像」への違和感である。
阿部氏は、編集長に就任した当初の葛藤を率直に語った。急に先輩が部下となり、リーダーとしての発言や決断を遠慮していたという。
「編集長だからといってえらくないんです。えらいんじゃなくて役割が違います。同じチームなんです。」
リーダーは全てを完璧にこなさなければならないという思い込みに気づき、それを手放し、「できないところは頼る。一緒に作る」と、見出したリーダー像について述べた。
また、決断への恐怖についても触れた。
「決めることに慣れる。」
元上司からアドバイスを受けたこの言葉が、リーダーとしての覚悟を支えたという。
会場では、大きくうなずく参加者の姿が見られた。
3 弱さを見せる勇気、支えるリーダーシップ
松本氏は、自身の立場を「ソートリーダーシップ」と表現した。ソートリーダーシップとは、専門知識や革新的なアイデアを発信し、業界や社会に影響を与えるリーダーシップのスタイルのことを指す。部下を持たなくても、考えを発信し、信頼を築きながら周囲に影響を与えてリーダーシップを体現しているそうだ。
「色々なタイプのリーダーシップがある。違った生き方を見せていくことは重要かなと思います。」
さらに、
「弱さを見せることも、とても大切ですよね。」
と語った。
そして、Amazonの考え方として「みんながリーダー」という言葉があり、役職に関わらず主体的にそれぞれの立場で行動する姿勢を大事にしていると紹介された。
桜田氏は「リーダーの形は一つではないと知ることが安心感につながりますね。」と応じ、場の空気はより柔らかくなった。

4 困難と向き合うための視点
リーダーとして困難に直面したときの向き合い方についても、具体的な経験が語られた。 阿部氏は、部下からの相談をきっかけに「感情と事実を切り離す重要性」に気づいたと話す。 「表面的な相談内容と実際に伝えたいことが異なる場合があります。自分がこんなに頑張っているのに見てもらえていない、評価につながっていない、という気持ちが部下の中で積み重なっていたんです。」感情が積み重なり、誤解が生まれていたことに気づいた経験である。きちんと見ていることを伝えるタイミングを逃していた自分の責任にも気づいたという。 桜田氏は「全然違うところにあったんですね、真意は。」とその展開に驚きを見せた。 松本氏は、困難なときこそ「一人で抱え込まない」ことを挙げた。 「色々な視点が入るということは前に進みやすくなる。まずはやってみてから決めようと行動に移せる。だめだったらそこから考えれば良いと思います。」と様々な視点から考え、意思決定してみる大切さを語った。 桜田氏も、「悩みはひとりで抱えていると、自分の中でどんどん大きくなりますよね。でも話してみると違う観点をもらえたり、あまりたいしたことじゃないと自分で気づけたりする」と共感し、参加者も深くうなずいた。
5 主体性を引き出すリーダーシップ
「学生の団体活動の中で“やらされている”感覚を持たせないためにはどうすればよいか。」
事前に寄せられた在学生からの質問も紹介された。
「人を育成するリーダー」に必要な姿勢を深堀りしていき、桜田氏は「フォロワーシップという言い方もあります。今までは「俺についてこい」というリーダーのタイプが一般的だったけれども、みんなを後ろから押していくようなフォローの仕方も注目されていますね。」
と二人に問いかけた。
松本氏は、
「共通のゴールを持つ。リーダーにとって重要なのは仕事を任せることです。」
と述べ、主体性を持ってもらうような状況を作っていくこと、自分から言いやすい雰囲気を作ることの重要性を語った。
阿部氏は、
「自分で決めたことは主体性をもってやるんです。」
と述べ、
「こんな風にやろうと思っているけれどどう思う?どうやったらできるかな?」
と問いかけ、相手が自ら決めるところまで導くことが大切だと語った。
リーダーの意見を突き通すのではなく、主体性をもつところまで導くという「支える」リーダー像がお二人の意見が重なるポイントに感じられた。

6 アバター理論とチームビルディング
参加者からは、「リーダーをつとめているが、自分の感情や相手の感情によってチームの雰囲気が悪くなり、自己嫌悪に陥ることがある。チームビルディングのヒントが欲しい。」という率直な悩みも寄せられた。
阿部氏は、「全ての人に好かれる必要はない」と語ったうえで、自身が実践している「アバター理論」を紹介した。
「仕事上の自分はアバターが演じているという考え方も、ときには取り入れています。こう考えることで、何か傷つくようなことが起きても、本来の自分は傷ついていない、家族など分かってもらえる人にわかってもらえば良いと思えるようになります。」と役割と自分自身を切り分けることで、必要以上に自分を追い込まない工夫をしているという。
松本氏は、チームで性格診断を行い、お互いの違いを発表しあった経験を紹介した。
「タイプの違いが分かるだけで、腑に落ちることがあります。」
違いを理解することが、チームの土台になると語った。
自分のノートや手帳に熱心にメモする参加者が多かった場面であった。
7 「構想力」を持つリーダー、「楽」しく働くリーダー― それぞれのキーワード
リーダーシップにおいて大切にしているキーワードを問われると、フリップを示しながら松本氏は「構想力」を挙げた。
「見えるような形で可視化してあげることはとても重要。「構想力」というのは、断片的な事象やファクトがつながってより大きな価値を生み出す、それはストーリーのようなもの。ストーリーのほうが人々には伝わりますよね。」
と事業計画においても、サービスが誰にとってどのような価値があり、どのように生活を変えるのか、その業界を理解していない人にも示す重要性を説明した。
阿部氏は「楽」という言葉を掲げた。
「私たちが働いている意味をもう一度問い直す、楽しいはずだったよめということにもう一度きづいてもらうのは大事だし、自分が楽しくないと、チームも楽しくなくなってしまいます。」
と現実的な数字を掲げる目標設定も大切だが、働く意味や理由を見失わないよう楽しむ気持ちを大切にするという姿勢が印象的だった。商品には制作した人々の気持ちも反映されるため、クオリティを維持するためにも「楽しさ」をもちながら働く効果を解説した。
2つのキーワードに、会場は静かに、しかし確かな熱を帯びていった。


8 明日からはじめられる小さな一歩―挑戦することで新しい世界が開ける
ここまで、新たなリーダー像が提示されてきたが、参加者も明日すぐに取り入れられる様な小さな一歩はあるのだろうか。
松本氏は、「いつもと違うことをやってみる」ことを勧めた。
「違う部署の会議に参加してみる、違う道を通ってみる、など何でもよいです。そういうことで新しい世界が簡単に見えて来ることがあり、私もそれを重視しています。」と話した。
阿部氏は、「迷ったら絶対にやる」ことを勧めた。
「できないかもという理由で選ばないことはもったいないと思います。やってみないと分からないから。今、自分ができることしかやらないと、そこで終わり。挑戦することで自分の選択肢や道が開いていくと思っています。」と語った。
9 会場からの声を通して見えた「リーダー像」―自分を信じて前に進む
パネルディスカッション終了後、会場からは次々と手が挙がった。予定時間を超えながらも、時間の許す限りQ&Aが続いた。率直で等身大の問いが飛び交い、会場の空気はさらに熱を帯びていった。
◇「やってみる」ことで世界が広がる
参加者Aからは、こんな悩みが投げかけられた。
「夢や目標をもちなさいとよく言われますが、それを見つけられないのが悩みです。20代で夢や目標が見つかった経験があればお聞きしたい。」
松本氏は、穏やかにこう答えた。
「心配しなくてよいです。できることは何でもやってみる、という意識を持つと良いのではないでしょうか。」
阿部氏も続ける。
「夢や目標は、持とうと思って持つものではないように思います。好きなことがあったらその周辺を調べてみる。興味がなくても、とりあえずやってみる。そこから見えてくるものがあると思います。」
さらに桜田氏も、「“やってみます”と応えることで、色々な仕事が始まりました」と自身の経験を振り返り、行動することの大切さをまとめた。
“やってみる”という小さな一歩が、世界を広げる。
その言葉に、多くの参加者が深くうなずいていた。
◇「やりたい」という気持ちが武器になる
参加者Bは、リーダーに挑戦する際の不安を率直に語った。
「いざリーダーになるとき、自分にできるのか、周りが認めてくれるのかというプレッシャーがあります。どう向き合えばよいでしょうか。」
阿部氏はこう応じた。
「いきなり成功しようと思わなくてよいです。そこからチームのみんなとやっていくことなので。周りから色々言われることもあると思いますが、あまり気負いせず、“やりたい”という想いをもってやってみることが重要だと思います。」
松本氏は、
「まず、リーダーに手を挙げること自体が素晴らしいことです。マネージャー研修を受けてみたり、自分の思いを会社に伝えたりすることも一つの方法です。」
と背中を押した。
“やりたい”という気持ちは、力になる。
そのメッセージが、会場に確かに届いていた。
◇「心」を動かすリーダーシップ
参加者Cは、リーダーとしての決断について質問した。
「みんなが納得できる環境づくりが大切だと思うのですが、リーダーとして決断するとき、何を意識されていますか。」
松本氏は、
「“同調”ではなく、“議論”することが重要です。議論を経て、前に進むために決定を下すのがリーダーの役割です。」
と語った。
阿部氏も、
「全員が満足することを求めすぎなくてよいと思います。相手が求めているものを知り、良いところを見つけ、その人に合った仕事を振ることを意識しています。」
と述べた。
そして最後に、こう付け加えた。
「何よりも自分もチームも楽しく取り組めることが重要で、人を動かすということは、“心を動かす”ということだと思っています。」
質疑応答を通して浮かび上がったのは、リーダーシップとは“誰かの上に立つこと”ではなく、
自分を信じ、対話し、役割を引き受けながら前に進むことだという姿だった。
参加者の問いが、議論をさらに深め、各自のリーダー像をより具体的なものにしていく時間となった。

10 参加者の声に見る変化
イベント終了後、参加者からは多くの前向きな声が寄せられた。
「「楽しさ」を追究するという言葉が印象的でした。女性ならではの視点を使ってコミュニケーションを発揮していく大切さに気が付きました。」
「考え方次第で「楽しむ」ことができるリーダーシップの在り方を知ることができました!」
「私も、「違う路線を使う、違う店舗に行く」など新しい刺激を受ける一歩を明日から取り
入れたいと思いました。活躍されている卒業生の姿を見て元気をもらいました。久しぶりに
東女に来てよかったです!」
「リーダーだからという理由で全部ひとりでやろうとせずに、チームの一員としてのリーダーであるという意識を持とうと思えました。」
従来の「指導者」としてのリーダー像だけでは、その立場にいる人を気負わせるだけだっ
たかもしれない。しかし、リーダーを務めた経験を話されるお二人には、共通して「楽しむこと」や「弱さを見せること」という新たなリーダー像があった。リーダーが上にいるのではなく、お互いに本音で話し合えることでチームビルディングがうまれる。リーダーは一つの役割に過ぎず、自分らしいリーダーシップをとることで、楽しむことができる。正解はなく、プレッシャーを感じる必要もないということが参加者にもよく伝わった様だ。
最後のワークシートに静かに向き合い、自分の「リーダーシップ」についてまとめる参加者の姿からは、明日から踏み出す小さな一歩を見つけた様子がうかがえた。

11 Learn and be CuriousとLead your life ― 自ら動くことの大切さ
イベント終盤、松本氏は「Learn and be Curious 学び好奇心を持つ」、阿部氏は「Lead your life」という言葉を参加者へ贈った。
リーダーシップは特別な誰かのものではない。
自分の人生の舵を、自分で取ること。
問いから始まり、自分の言葉で定義する。
そのプロセスこそが、この日のリーダーシップのかたちだった。


【編集後記】
リーダーシップには唯一の正解はなく、多様な形が存在することを今回の講演で学んだ。個の力で牽引するだけでなく、周囲を活かす在り方を知り視野が広がったので、今後の活動でも自分なりの形を模索したい。(猪野)
リーダーシップは強さや威厳を示すというイメージがあったが、それに怯える必要はないことに気づかされた。他者と協力しながら時には弱さを見せ、自身も心地良いと思えるリーダーシップを追求していけば良いのだと勇気をもらえた。(川口)
今までリーダーとは完璧でみんなを導く大きな力がなければ担ってはいけない役割だと考えていたが今回のワークショップを通して弱い部分を見せることでチームとして力を発揮でき様々なリーダーの形があって良いのだと学ぶことができた。(鈴木)
今回この講演を通じて、リーダーシップについて詳しく知ることができた。私はリーダーシップをとることがあまり得意ではないため、ここでの学びをバイトや大学での活動でも活かしていきたいと思った。(井上)
