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-在学生、卒業生、センター開催プログラムの講師、教職員などセンターにゆかりのある方々に、授業の様子、学校生活、仕事、日常生活について、様々な視点から自由に書いていただきます-

エンパワーメント・センターブログ #6

佐藤先生との思い出

 余りにも偉大だった佐藤宏子先生。アメリカ文学者として、女性の先輩として、佐藤先生のしなやかで潔い人生は、多くの東京女子大生に自分の人生を切り開いていく力を与えてくれたことと思います。先生は昨年(2022年)の10月28日に88歳でご逝去されました。

 佐藤先生のアメリカ文学の研究は、時代、社会状況、政治などを踏まえた生きた学問でした。先生の洞察力のある授業を受けるうちにいつの間にか私はアメリカの虜になっていました。
 1977年に英米文学科を卒業した私は、文学を通じて垣間見たアメリカを自分で体験してみたいと言う夢に取り憑かれていました。早く結婚をして子育てを始めるようにという家族や親戚からの期待をよそに、ついに1979年にマサチューセッツにあるマウントホリヨーク大学から1年間の奨学金をいただきました。佐藤先生は推薦状を書いてくださったのみならず、アメリカンスタディーズの研究計画のアドバイスもしてくださいました。
 研究終了後は地元の新聞社でライター、レイアウトデザイナー、エディター、そしてニューヨークでジャーナリズムの雑誌のアート/デザインディレクター、ウエブプロデューサーの仕事をしました。
 佐藤先生はオペラの大ファンで、ニューヨークにいらっしゃる度に食事に誘ってくださいました。正直なところ、学者の佐藤先生のイメージと、楽しんでおられるオペラの人間臭い嫉妬だの、仇だのといった世界とには、少しギャップを感じました。でも今になって思いますと、先生の文学、芸術への情熱には共通した姿勢が感じられました。キラキラと輝く眼を持った子供のような純粋さがありました。

 佐藤先生、長い間そっと私の背に手を当てて励ましてくださって有難うございました。先生との思い出を大切に、これからも前を向いて生きていきます。

松尾玲子Latanzio(1977年文理学部英米文学科卒)