株式会社ウェック・トレック

1979年 短期大学部教養科卒業

 「新しい地図」

 1976年、牟礼のキャンパスの入り口は満開の桜並木でした。数々の大学に落ち、傷心のもとで入学の門をくぐった私にはこの並木道はまぶしすぎました。キャンパスはこじんまりした落ち着いた学び舎で、少人数のため全員が友人であるような雰囲気を感じ、その穏やかなキャンパスライフに慣れたのはあっという間でした。その後、縁あって善福寺のキャンパスにも足しげく通い過ごした時間は宝石のような時間です。キャンパスには全国出身の学生、先輩、個性のある先生方にバラエティに富んだ世界を垣間見るステップでした。 
 それから女子大のゼミの企画で行われたOGと先生による研究視察に参加、訪れたところは世界の屋根ヒマラヤの麓、ネパールでした。その場所はそれまでの人生で経験したすべてを打ち崩すほどの世界、異なる文化、驚異の自然、厳しい生活と美しい景色。この時に私は多くの発見と出会い、そして友情を育みました。最年少で参加した研究視察で何物にも代えがたい強い印象を受け、その時からヒマラヤに関するありとあらゆる関係者に会い、文化、歴史、民俗、そして登山を教わるチャンスをいただき夢中になって勉強をつづけました。ゼミの研究ではその入り口を開けてくれ、広がる世界を感じました。

ヒマラヤ、ネパール、ナムチェバザールから見た世界最高峰8848mのエベレスト

 その後、縁あって山岳旅行・山岳コンサルタント業界に足を踏み入れ、ハイキングから登山隊遠征のお手伝い、世界の山岳地帯へのテレビの撮影のコーディネート、たまには山岳地帯での事故まで関わり、山岳コーディネーターの仕事として経験を重ねていき、いつの間にか知識となり学識となり力となり、そして自分の地図を少しずつ作り、広げてきました。

キリマンジャロの麓、マサイ族の集落にて

 女性には厳しいと言われた世界の厳しい自然条件下での山岳地帯での仕事、インフラの整っていない地域で現地の方々と活動し、さらにその輪を多くの方に提供するとき、女性だからこそできる配慮と女性にはできないと言われないようにすることを心がけてきました。そして、その時にいつも胸にある言葉はService and Sacrifice(奉仕と犠牲)。この言葉に宿る精神は「何事につけ、感謝をこめて祈りと願いをささげ」ということと思っています。まだまだ途上の最中ですが。 

 一歩キャンパスを飛び出せばそこには待ち受ける現実。でも誰にでも目の前には広がる大きな地図。そこには大きな険しい山があり、乗り越えてこそ見える景色、その先に広がるあなただけの新しい地図。大学で過ごした時間を胸に一人ずつ新しい地図に、山に挑んでください。地図を作るのはあなたです。