第1回「ジェンダー・ギャップと女性のエンパワーメント」
2015年11月3日(火・祝)開催
開会挨拶:東京女子大学学長 小野祥子
挨拶:東京女子大学エンパワーメント・センター長 栗田啓子
講演:「女性たちの現在 日本社会の変容の中で 」 本田由紀
講演:「ジェンダー・ギャップと女性のエンパワーメント 女性の政治参画を目指して 」 大山七穂
講演:「男女共同参画の実現に向けた女性の就労・生活支援 エリート女性と恵まれない女性のどちらを優先するか 」 橘木俊詔
パネルディスカッション
連続シンポジウム第1回(2015 年)「ジェンダーギャップと女性のエンパワーメント」では、女性 のいっそうのエンパワーメントにとって、現在とくに重要性の高さが指摘される教育、経済、政治各 分野の現状と課題を確認した。まず本田由紀氏(東京大学大学院教育学研究科教授)による講演で、 家族・教育・仕事の戦後日本型循環モデルが大きく変容する現在、多様な状況にある女性が真の意味 で活躍することを阻む要因が確認されるとともに、家族・教育・仕事のそれぞれの分野に望まれるあ り方が提案され、シンポジウム全体の基調となった。続いて政治分野についての大山七穂氏(東海大 学文学部教授)の講演では、女性の政治参画の現状といっそうの参画が必要とされる背景、また女性 の参画を阻む有権者側、制度側の要因がそれぞれ指摘され、打開への展望が示された。締めくくりの 橘木俊詔氏(京都女子大学客員教授)による経済分野に関する講演では、男女間の格差だけでなく女 性間格差に目を向ける必要性および格差克服の重要性が強調され、より積極的な取り組みへの期待が 述べられた。ディスカッションでは、日本の雇用システムの特性と高年齢保守層、女性の労働参加と 政治参画のトレードオフ、女性の教育分野などのキーテーマについて活発な議論が展開された。
第2回「女性の政治参加とジェンダー・ギャップ」
2016年11月3日(木・祝)開催
開会挨拶:東京女子大学学長小野祥子
基調講演:「女性の政治参画〜クオータ制をすすめる」赤松良子
事例報告:「クオータ制が進む国、進まない国」国広陽子
クロストーク:「これからの女性の活躍のために」
第2回(2016 年)は女性の政治参画をテーマとした。赤松良子氏(公益財団法人日本ユニセフ協会 会長)による基調講演では、労働分野を中心に女性のエンパワーメントに尽力されてこられた氏の立 場から、各分野における女性のエンパワーメントの現状と課題が整理されるとともに、わが国におけ る女性のエンパワーメントに現在もっとも必要とされている分野として政治参画が位置付けられ、停 滞状況を打破する方策としてクォータ制導入が提案された。続く国広陽子氏(武蔵大学名誉教授・前 東京女子大学教授)の報告では、状況変革の必要性が改めて強調され、政治分野でのジェンダークォ ー タ制導入が進む事例として国別女性国会議員比率で最上位のルワンダ、および日本と共通する風土を 持ちながら制度導入を積極的に進める韓国の事例が紹介され、日本への示唆として女性運動の力、政 治トップのあり方、政党間の競争的関係などが指摘された。後半のクロストークでは、東京女子大学 在学生4名による質問を皮切りに、クォータ制導入を促した各国の背景、適切な候補者の確保や政治 分野の意味ある革新に対するクォータ制の導入の効果、クォータ制が形式的な男女平等を超えて真に よい政治をもたらしうる道筋などの論点を中心に議論が深められた。
第 3 回「女性を支える金融―途上国におけるマイクロクレジットの成果と課題―」
2017 年 11 月 2 日(木)開催
開会挨拶: 東京女子大学学長 小野祥子
趣旨説明: 東京女子大学教授 古沢希代子
報告1: 「マイクロファイナンスと女性のエンパワーメント」 岡本眞理子
報告2: 「南インドで挑戦した女性にやさしい信用金庫のつくりかた」 原康子
パネルディスカッション
第3回(2017 年)は経済分野に目を移すとともに視野をよりグローバルに広げ、途上国の女性をエ ンパワーするマイクロクレジットをテーマとした。まず岡本眞理子氏(日本福祉大学国際福祉開発学部教授)の報告では、マイクロクレジットからマイクロファイナンスへの枠組みの展開が跡付けら れ、「確実な借り手」としての女性たちに大きく支えられ仕組みが一定の成果を見てきたことと同時 に、女性のエンパワーメントの観点からは期待された効果が必ずしも見られない面があること、マイ クロファイナンスは地域経済や福祉の発展のなかに適切に位置付けてこそ意味のあるツールであることが指摘された。続く原康子氏(開発コンサルタント)の報告では、ご自身が関わった南インドにお ける「女性にやさしい信用金庫」作りの実践を事例に、途上国の女性を支援するとはどういうことか、 その際、支援者側に求められる態度はどのようなものかについて、現場経験者ならではの視点で述べ られた。パネルディスカッションでは、支援の効果についての見方、支援者と被支援者との関係、受 益者を一部の女性だけにしないための方策など、金融支援の仕組みを女性のエンパワーメントにより よくつなげるために必要な事柄をめぐって質疑応答がなされた。
第 4 回「女子大学の新たな使命」
2018 年 11 月 2 日(金)開催
開会挨拶: 東京女子大学副学長 栗田啓子
基調講演: 「21 世紀が求める女子大学―変えてはならないこと・変えるべきこと―」 湊晶子
基調報告: 「女子大学の新たな使命―変わらぬ使命―」 大場昌子
基調報告: 「21 世紀における女子大学の存在意義―高等教育界における男女共同参画の現状―」 髙橋裕子
基調報告: 「東京女子大学の教育と、女子大学の役割」 茂里一紘
問題提起: 「現代日本社会における女子大学の意義」 田中俊之
パネルディスカッション 「女子大学の新たな使命」
最終回(2018 年)は「女子大学の新たな使命」と題し、女性のエンパワーメントのために教育、と りわけ女子大学が今後果たしていくべき役割を考えた。湊晶子氏(広島女学院院長・広島女学院大学 学長、元東京女子大学学長)による基調講演では、女子大学の新たな使命とは、「人格・ぶれない個」 をもち「挑戦しつづける」女性の育成にあるとのメッセージが述べられた。これに呼応し、大場昌子 氏(日本女子大学学長代行)からは「男女というジェンダーを措いて、それぞれの個性を尊重して教 育する」ことが、髙橋裕子氏(津田塾大学学長)からは高等教育界における男女共同参画の牽引役と しての役割が、茂里一紘氏(東京女子大学学長)からは、教育の場としても卒業生のライフキャリア 構築支援という点でも、ダイバーシティの理念を後押しする機関としての意義が強調された。三女子 大学トップによる報告では総じて各大学が掲げる伝統的理念の今日的意義が確認されたのに対し、田 中俊之氏(大正大学心理社会学部准教授)の問題提起では、教育内容、課外活動における位置、女性に関 わる社会問題への発信の観点から、より広く女子大学への期待が表明された。続くディスカッション でも女子大学が果たしていくべき役割の多面性が示唆され、全4回のシンポジウムが締めくくられた。