NOと言う力
「エンパワーメント」という言葉が「力を(自分に)与える」ことを意味するとすれば、私たちが今、高めるべき力とは何でしょうか。それは、何よりもまず「NOと言う力」ではないかと思います。もちろん、本当にNOと言うべきものに対するNOです。一概に否定されるべきではないかもしれないものを、NOと言うことがあたかも「正義」かのように説く一見もっともらしい言葉には、うっかり乗せられないようにしないといけません。「女性のエンパワーメント」として世に喧伝される事柄も、残念ながらかならずしも例外ではないようです。
価値観やライフスタイルから社会的ルールや制度まで、本来はNOを突き付けるべきものなのにあれやこれやの手段で積極的に持ち上げられる物事で、現代社会はますます溢れかえっています。多くの人が薦めに従っているようにみえるときはとくに、あえてNOと言うのは怖かったり面倒くさかったり申し訳なかったりします。それでもNOを言うのは、本当の意味でYESと言えるものを守り続けたいと思うからです。本当にYESと言えるものは何か、私たちはみな、心の奥底ではわかっています。ひとりで、また仲間とともに、この社会のおかしさに対してNOを示すことが、私たちそれぞれの中に、またこの世界に、真正のYESのための場所を広げていくのです。
金野美奈子(本学教員)