国立国語研究所 准教授

1991年文理学部日本文学科卒業

 

 

 

 私は国立国語研究所で、「コーパス」と呼ばれる言語データベースの構築に携わっています。言語資料の収集や、研究に必要な様々な情報の付与が主な仕事です。また、その「コーパス」を活用しながら辞書記述の方法を研究しています。『広辞苑』(第七版)、『岩波国語辞典』(第六版、第七版、第七版新版)、『学研新レインボー小学国語辞典』(改訂第五版)の改訂にも参加しました。

 

 東京女子大に入学する前、「コンピューターを使って日本語を研究するゼミがある」と聞き、それはどういうものなのだろうかとワクワクしながら入学しました。コンピューターが今ほど普及していなかった当時、数学の理論を道具立てとするとてもユニークなアプローチで日本語の文法や意味を研究していたのが、水谷静夫先生と、丸山直子先生の、水谷・丸山ゼミでした。

 

 中高生の頃は、文法の授業にはまったく興味がなく、言葉の意味についてじっくり考えたこともありませんでした。それが、『岩波国語辞典』の編者でもある水谷静夫先生や、IBMでの研究職を経て大学に戻っていらした丸山直子先生から、「名詞は主語になるというが、「図星」は主語にはならない!」といった品詞分類の問題や、助詞の用法、似た言葉の意味の差異、意味の変化、などの授業を受け、驚きと発見の連続でした。言葉の観察と分析の面白さに夢中になりました。

 

 コンピューターを使うと、それまでの文法論や意味論を検証し、問題点を明らかにすることができます。その面白さに魅了され、4年次の卒業論文ではプログラミングに挑戦しました。コンピューターに小説を読み込み、すべての指示語の指示先を特定するというテーマを設定しました。夏休み以降は計算機室に通い、ひたすらプログラムの書き直しを繰り返しました。プログラミングは正確さや緻密さが要求されます。いい加減だった性格が、ずいぶんと補正されたような気がしました。

 

 卒業後、富士通株式会社を経て、現在の職に就きました。昨年度より非常勤講師として、再び東京女子大のキャンパスに通う機会に恵まれました。今も変わらぬ美しいキャンパスを訪れるたびに、自分の通学した日々が鮮明に思い出されます。思い返すと、大学で学びに集中できたのは、東京女子大が美しいキャンパスであったからこそだと思います。これから先も、美しい東京女子大での育みが、ますます大きく広がっていくことを願います。