一般社団法人東京女子大学同窓会
拡大写本あじさい  代表

 

1969年 短期大学部 英語科卒

 

 牟礼の短期大学部に入学したのは1967年でした。担任は英文タイプの米倉マサヱ先生、他に音声学の小林祐子先生、映画「卒業」を一緒に観に行ったインド人のマネ先生、クラブ顧問の福田一郎先生・・・と熱心で優しかった先生方を懐かしく思い出します。

オルフェウスのコンサートの レコードジャケット

 

 そして、何と言っても大きな位置を占めたのはギターとマンドリンのクラブの活動でした。2年生になる時、部員50名の大きなクラブだった「オルフェウス」の部長に指名され、杉並公会堂でのコンサートを皆で苦労しながら成功させた思い出は今も胸を熱くします。その時の仲間とは、今でも毎年一緒に旅行を楽しむ、卒後50年経っても仲の良い友人達です。

 1969年卒業と同時に全日空(現ANA)に入社。子供の頃からの夢だった客室乗務員(当時はCAではなくスチュワーデスと言いました)として空を飛んでいました。ボーイング727・737、 YS―11、フレンドシップ等に乗務、徐々に飛行機での旅行が一般的になった時代で、インストラクターの資格も取りこれから国際線のチャーターフライトが始まるという頃(当時全日空は国内線のみ)結婚のため退社。当時は「30歳定年、結婚時は退社」という時代でした。私は3年弱のフライト生活でしたが、emergency時にはお客様を安全に誘導する際の大切な要員として機材知識、非常装備など勉強しながらも、快適な空の旅を楽しんで頂けるサービス業務もこなすというプロとしての使命感を持ってする充実感のある仕事でした。

 その後、航空関係だった主人に時間を合わせた生活になり、2人の子供の子育てとアメリカ駐在生活も含めて専業主婦をしていましたが、下の子が中学生になったのを機に何か社会に繋がる事がしたいと思い始めていた頃、同窓会報の紹介記事で「拡大写本」を知りました。既存の本の字を大きく書いて弱視の方に読みやすく作るものですが、そのグループあじさいは小学生向きの児童書の手書きによる本作りをしていました。元々、本も字を書く事も子供も好きな私にはぴったりの活動に思えて早速入会し以来30年となります。拡大した本は現在、全国9か所の盲学校等に無償で寄贈しています。

 あじさいでは72年館で月に2回例会を持ち、企画、原本分け、校正、製本、発送作業をしています。分けられた原稿は各々家に持ち帰り、決められたマス目にそってフェルトペンで用紙に書き、それを又持ち寄り一つにまとめて本を作ります。綺麗に字を書くのは難しいですが、手書きの文字は温かさが感じられると好評ですし、読んだ子供たちが「とても読みやすくて本を読むのが好きになりました」と感想を寄せてくれ励みになります。

製作した拡大写本

 拡大写本は喜んで頂けるけれど、製作していく上ではさまざまな問題がありました。ところが2015年に富士ゼロックスから印刷協力を受けられる事となりコピー代が大幅に削減され、2017年には同窓会が一般社団法人になった折、あじさいの社会貢献が認められ直属の団体となると同窓会からも活動資金が出る事になったのです。以前の様に資金不足で悩み、助成金を申請していた頃からすると夢のようでした。又法人になったことで申請し「文化庁の指定」も受ける事が出来、煩雑だった出版社への著作権申請作業がなくなり速やかに、また以前は出来なかった外国の作品も製作する事が出来るようになりました。

 ゼロックスの印刷協力と共に、用紙提供して下さる富士ゼロックスインターフィールドの社長は同窓生の鏡久賀さんで、SS精神で繋がっている様でそれも嬉しい偶然でした。東京女子大学の小田浩一教授からは原本のデジタル化についてのアドバイスを頂き、原本をスキャナーで読み込んでのデジタル管理で作業時間も大幅に短縮されました。この様に活動を続けるにあたり女子大にゆかりのある方々とのご縁を感じ、有難く思っています。

 以前は大変だったことが一つ一つ解決され、メンバー皆でコツコツと活動してきたことが実を結んできた様で代表としては肩の荷が下りた様な気がしています。製本するための簡易製本器や紙折り器を日曜大工が得意な主人が沢山手作りしてくれた等、家族の支えもあって長い間活動を続けられたことにも感謝しています。2019年3月で私は代表を次の方に引き継ぎます。デジタルの時代ですが、紙の本は無くならないと信じて、待っていてくれる弱視のお子さんに喜ばれる拡大写本をあじさいはこれからも作り続けてまいります。同窓会のこの活動をSS精神溢れる皆さまが関心を持って頂けたらと願っています。

 2年間の東京女子大での生活は私にはかけがえのない豊かなものでした。友人達との出会いや、ボランティアを通した方々との関わり、今勉強している古典文学の先生との出会いなど、皆現在につながっているからです。趣味のフルートや5人の孫たちとの交流も楽しみつつ「Service and Sacrifice」の精神で自分が今できる社会貢献をしていきたいと思っています。そしてその精神を学んだ今後の東京女子大生のご活躍をお祈り致します。

 

拡大写本あじさいHP   http://ajisai72twc.web.fc2.com/