ロイヤルメルボルン工科大学大学院
国際開発研究科 専任講師

1997年  文理学部社会学科
     (経済学コース)卒業

 

 

東京女子大学創立100周年おめでとうございます。卒業生101人のストーリーにおいて、私のライフストーリーを書く機会を与えて下さり感謝致します。東京女子大学在学中そして卒業後にわたり、素敵な先生方や東女生との出会いが私自身のエンパワーメントの原動力となっています。。

ー厳しかったけど学生思いの村松安子先生
現在、勤務先のロイヤルメルボルン工科大学(通称RMIT大学)大学院では、恩師である故村松安子先生(東京女子大学名誉教授)が担当されていた開発経済学とジェンダーと開発を担当しています。在学中は将来村松先生と同じような仕事をするとは、思ってもみませんでした。

1年次に村松先生の講義で、ジェンダー視点に立った新自由主義の再編に関する枠組に興味を持ち、翌年から村松ゼミに入りました。村松先生は経済学専攻の中で最も厳しい先生だと噂があり、友人たちは村松ゼミを敬遠していました。その噂どおり、村松先生のご指導は大変厳しいものでした。英文の経済学用語をうまく訳すことができないと、先生から叱責されることもしばしばありました。毎回白熱したゼミの後、唯一の楽しみは友人と吉祥寺でお茶をすることでした。

在学中は怖いイメージの村松先生でしたが、私がオーストラリア留学中には滞在先のコンドミニアムでムール貝のワイン煮を作って下さりました。「良い論文を書くには良質の文献とデータが必要なのと同じで、美味しいものを食べるには新鮮な食材をそろえる努力が必要。」とおっしゃったことが今でも忘れられません。

ー生物学研究室の矢澤静江先生と外村泰子先生との出会い
学術研究の魅力を肌で感じる機会に恵まれたのは、生物学研究室の矢澤静江先生と外村泰子先生との出会いからでした。偶然1年次から矢沢静江先生の下で、朝鮮ニンジンを試験管で培養したり学内の植物を分類するお手伝いをしました。矢沢先生のお人柄を慕って、生物学研究室にはいろいろな方々が訪問されていました。一方、外村泰子先生は、電磁波がショウジョウバエの生殖に及ぼす影響についてご研究されていました。見事に家事と研究を両立させていらしたお二人の先生方は、憧れの女性研究者となりました。

卒業後、夏の暑い盛りの時には、静かで涼しい生物学図書室を博士後期課程の受験勉強のために貸して頂きました。外村先生が私の体調を気遣って、お昼にお手製のおうどんを作って下さりました。先生の優しさに心温まる思いでしたが、食べ終わってから先生が「おうどんはショウジョウバエの実験器具で作ったのよ。」とおっしゃった時は体がひやっとしました。すべての志望校に合格することが出来たのは、このおうどんと受験勉強のおかげだと思ってます。

ー現役東女大生からパワーを授かる!
人生にはハッピーなことばかりではなく、克服しなければならない困難に直面することがあります。日本のみならず、私の住むオーストラリアでも様々な面で男女間の格差は根強く残っています。この問題は大学でさんざん学びましたが、いざ自分の問題として降りかかってくると状況は全く別。移民女性で2人の子供のママである自分の状況を悲観することもありました。しかし、隔年講義の「ジェンダーの経済学」において、現役東女生と内外のジェンダー課題を共有し議論することで、私自身がパワーを授かりました。そして何よりも、自分が今まで培ってきた知識や経験を信じて、困難に立ち向かう勇気が必要だと再認識しました。

 

一方、困難に立ち向かうためには、体力が必要です。2019年から国際開発研究科長に就任することになり、健康管理は重要な課題です。毎日片道7Kmの自転車通勤と週1回のパーソナルトレーニングをベースに、夏はスノーケルやスタンドアップパドルボードなどのマリンスポーツを家族で楽しんでいます。

 

メルボルンにお越しの際は、健康的な研究者ママに是非声をかけて下さい。異国から皆様のご活躍をお祈りしています。