あおぞら銀行 コンプライアンス統括部
2001年 文理学部日本文学科卒業
私が、東京女子大学に入学したのは、1997年のことです。本を読むことが好きだったので、日本文学科を専攻し、一般教養の授業では、観たことがなかった物珍しさから歌舞伎評論で高名な渡辺保先生の演劇入門の講座を受講しました。この時の選択が後の私の人生に大きな影響を与えるとは露にも思いませんでした。
私はその授業で松田正隆さん作、平田オリザさん演出の「月の岬」の映像を観て演劇の面白さに気づき、そのまま卒業論文を平田オリザさんについて、現在も本学で教鞭を執られている近藤裕子先生のご指導の下、書くことにしたのです。その論文がきっかけで本学の講演会に平田さんが呼ばれ、ご挨拶したのは良い思い出です。
就職し、現在も仕事の合間を縫って月5本から10本の観劇を続けています。卒業論文の指導教官であった近藤裕子先生が観劇友達です。先生と観劇後に感想を交わすのは、いつも刺激と示唆に満ちています。心が強く揺さぶられたものについて、美味しい食事やお酒と共に語り合うことは、人生の中でもとても贅沢で幸せなひとときです。
そんな関係もあって先生の院生、ゼミ生を中心とした研究会、木村敏研究会(通称キムケン)に呼ばれるようになり、先輩、後輩達と共に学び、時には演劇について講義をするようになりました。またキムケンでは、ゲスト講師(落語研究者、映画研究者、人形作家等)をお招きします。私は演劇について担当しており、現在第一線でご活躍されている「マームとジプシー」の藤田貴大さん、「二兎社」の永井愛さん、「ままごと」の柴幸男さんをお招きして、ご本人の前で作品分析やインタビューを行い、とてもスリリングで濃密な時間を過ごしました。もしかしたら私達の感想が作品にも何らかの影響を与えることがあるなら、それは僥倖だなあと思います。
私は今大学で学んだ事とあまり関係のない金融業界で働いています。でもたった4年間で学んだ事が後々の自分の人生に影響を及ぼし、こんな形で学び続けるとは思いもしませんでした。皆さんが学んでいる事は、今すぐ役に立つものではないかもしれません。でもあなたの人生を長く支え、何かの壁にぶつかった時に導いてくれるものを学んでいます。また学んだ事はあなたとあなたの周りの人達に良い影響をもたらします。知は誰にでも開かれており、学んだ事は誰にも奪われる事はないのだから、ずっと何らかの形で学ぶことをやめないで欲しいなと少しだけ長く生きている先輩としてそう思います。